やきもの事始め
陶器の発展 (2)

update:2018/03/16

では、いろいろな「陶器」の話の続きです。今回も引き続き、おそらく聞き覚えがあるだろうという、有名な陶器の名前をさらに挙げていきましょう。ただし、前回は日本国内の陶器でしたが、今回は日本に浸透している中国・朝鮮半島の陶器です。

まずは、朝鮮半島の陶器から。
前回、茶碗の話で「一楽二萩三唐津」という言葉を紹介しましたが、もう一つ「一井戸二楽三唐津」という言い方もあるのです。この筆頭になっているのが「井戸」。

井戸は高麗茶碗の一種。つまり朝鮮半島で焼かれたやきものです。戦国時代には、その茶碗一碗で領土にも匹敵すると言われたほど、戦国大名に愛されました。当時は朝鮮半島のやきもので、現在でも古陶磁としては超高級品。しかし現在では萩で井戸茶碗の形式に沿った茶碗も多く作られており、現在の茶人たちに人気があります。有名なところでが、萩の伝統の陶家の一つ、坂高麗左衛門の井戸。近年では11代坂高麗左衛門が名工として名高く、現在の坂家は初の女性が13代目を襲名(※註)しています。

もう一つ、茶碗で有名なのが「天目茶碗」。
言わずとしれた、唐物茶碗(からものちゃわん)、つまり中国製の茶碗の最高峰です。中でも最上とされる曜変天目(ようへんてんもく)は、現在では世界で4点しかないとされ、すべて日本にあります。しかも3点が国宝、残り1点は重要文化財に指定されており、まさに世界の宝です。
また曜変天目はその希少さもあって実に謎の多いやきもの。近代にはいって日本の陶芸家たちが復元を試みましたが、“星の瞬き”を意味する「曜(耀)」の幻想的な光彩はなかなか再現できませんでした。しかし現在は、何人かの作家が曜変天目を発表しています。茶碗は高価なものですが、曜変天目型の盃も作られていますので、こちらなら、手が届くかもしれません。

最後に、ちょっと毛色が変わりますが、恐らく博物館などで観たことがあるであろう有名な中国の陶器。ひょっとしたら、コレが一番有名でしょうか?
唐三彩(とうさんさい)です。

その名の通り、中国・唐の時代の短い期間に焼かれたもので、緑・赤褐色・白の三色の釉薬(うわぐすり)が掛けられた華やかなやきものです。日本でも奈良時代に技術が伝わり、作られています。日本の三彩は主に壺ですが、中国の唐三彩と言えば、なんといっても馬とか文官・女官・胡人などの俑(よう)。東京国立博物館の中国陶磁のコーナーには常設で数点あると思いますが、中国の博物館にはびっくりするぐらい大きな馬などもあります。子供なら乗れる程のサイズです。

ちなみに、三彩は中国でも日本でも長く作られる事がなかったのですが、現代に入り、陶芸家の加藤卓男(1917〜2005年)が技術の復元を試み、素晴らしい三彩作品を生み出しています。1995年には、重要無形文化財(人間国宝)「三彩」の保持者に認定されています。現在は後継者である7代加藤幸兵衛が技術を受け継ぐ形で、三彩作品を発表していますよ。

さあ、とりあえず、今回はここまでにしましょう。名前だけを挙げるつもりでも、きりがありませんから。
陶器の種類の多さは、一つは釉薬の種類の多さ。さらに釉薬を用いない焼締(やきしめ)。それらは多くの陶工たちが研究を重ね、現在まで受け継がれているもの、または材料の枯渇により不可能になったり、歴史に埋もれて、現在では再現できないものまで、実に多種多様のまま今日に至ります。

今回はひとまず、「陶器」というテーマですので、どんなものがあるのか具体例を挙げるだけで締めたいと思います。個々の陶器の種類はまたそれぞれのテーマで書きましょう。
次回は磁器に移ります。
 

天目 てのひらの宇宙 (別冊『炎芸術』)

新品価格
¥2,750から
(2023/6/14 18:09時点)


 
(2010年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)
 
※註:2014年の13代逝去に伴い、8年の歳月を経た2022年に、13代の長男が14代を襲名しました。(2023年6月加筆)