陶磁器の色いろ
モノトーン編:陶器の白

update:2019/02/22

白の器の代表は「白磁」ですが、陶器でも白い器が作られました。白磁と違って、温かみがあって、厚みもあるもの。素地そのものは通常は土色を残していますので、割れた陶片をみると、土色が顔を出します。また、湯呑などの底面(高台)を見ると、塗り残して土色が出ているものも多いですね。

では、代表的な陶器の白をあげていきます。

◎白化粧(しろげしょう)

白磁は高度な技術と書きました。そこで、白くない土の上に、白く塗ることが考えられました。それが化粧掛けという技法、その名の通り、肌に白い化粧を施すわけです。
やきものにおける化粧とは、有色の陶土の表面に白色の陶土を薄く掛けること。従って、白化粧は陶器であり、磁器はありません。素地が白い磁器に化粧を施す必要はありませんから。

化粧のやきものを一番にあげるとすれば、朝鮮半島の「粉引(こひき)」でしょうか? 粉をひいたように化粧を施したもので、特に茶碗に名高い名品が伝えられています。

中国では、磁州窯で作られていたのが有名です。こちらは、白無地の他に、その白地の上に黒で絵付けされたり、掻き落としで素地の色を出すなどの加飾も施されたものも多く作られています。

日本では、歴史的には、あまり有名なものはありません。朝鮮半島の粉引、あるいは白化粧に象嵌を施した三島(みしま)など、いずれも朝鮮半島のやきものを模したものが作られましたが、日本独自の意匠による化粧作品は現代まで待たねばなりません。

◎白秞(はくゆう)

白い釉薬(ゆうやく;うわぐすり)による白のやきものを紹介しましょう。
これも、はじまりは白磁への途中過程からと考えて良いかもしれませんが、そこから発展して、白磁とは全く別のやきものへと昇華していきました。

ちなみに、白化粧と白釉の違いは、焼いた時の仕上がり。釉薬とは、焼くと表面に薄いガラス質の層を作りますので、水をはじいたり、硬くしたりしますが、化粧土を掛けただけでは、そのような層はできません。化粧は主に色などの加飾をするだけで、その上から透明の釉薬を掛けるのが一般的です。

白秞には、主に2種類の成分のものがあります。長石(ちょうせき)を成分とした乳白色の釉薬と藁灰(わらばい)を成分とした白濁釉です。

長石の代表格は、美濃地方の志野(しの)でしょう。16世紀頃から、ごく短期間作られたやきものであり、昭和にはいって荒川豊藏が復活させるまで、長く製法が謎とされたやきものでした。ひょっとしたら、志野というと、緋色などの赤みを連想する方もいるかもしれませんが、前述の通り、志野は乳白色の釉薬をベースにしたやきもの。焼き方によって、赤みが加わったりするだけです。特に、前述の荒川豊藏は志野にほんのり染まる緋色を出した作品を多く発表していますので、そのイメージもあるかもしれません。もし、志野=緋色のイメージをお持ちなら、古い時代の志野の茶碗なども見ていただきたいと思います。

一方の藁灰釉で有名なのが佐賀の唐津。唐津焼にはいろいろな技法もあって、その一つの斑唐津(まだらからつ)が藁灰釉を使っています。光に当ててみると、白濁の地の中に青や黒の斑の模様がうっすらと見えるのが特徴。唐津焼の中でも歴史が古く、技法や原料には諸説があります。現代では、陶芸家によって、藁灰釉は餅米の藁で作るいう人もいれば、雑穀に違いないという人もいますし、今でも謎と言っても良いかもしれません。

もう一つ有名な、白秞と言えば、山口の萩でしょう。こちらは、現代まで途切れることなく続いており、陶家も十数代目という名家がいます。この萩の白も、釉薬の配合や焼き方によっていろいろあり、それが各陶家の特徴になったりしていますね。名高い陶家である三輪家では、休雪白と呼ばれる純白の藁灰釉が有名ですし、他にも長石釉を用いた釉薬もあります。

さて、代表的な「白」のやきものをご紹介しました。
次回は、モノトーン編の第2弾。「黒」を予定しています。
 

炎芸術no.133(2018春)―見て・買って・作って・陶芸を楽しむ 特集:粉引 やわらかな白の器

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(2011年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)