陶磁器の色いろ
陶磁器の色いろ (序)

update:2019/01/25

今回のテーマは、「色」です。
「陶磁器の色」という言葉のイメージで最初に浮かぶ色は何でしょうか? 土器を連想するなら土の色である茶色。日常の食器をイメージするなら、白と言う方も多いかもしれません。

実は、この2色は陶磁器の歴史において、見事に双璧をなしています。なせなら、茶色(土色)は、素材である土の色=やきものの原点の、自然の色だからです。そして、一方の白とは、人口的なものと言ってもいいでしょう。土を精製し、焼成の技術を上げていくことで、どんどん不純物の色をなくしていった結果、真っ白な磁器に到達したからです。

もちろん、陶磁器には他にも多彩な色があります。しかし、それらは、この土色か白色の上に彩色するのが基本です。黒だったり、青だったり、赤だったり。。。あるいは、土そのものに色を練り込んで焼き、発色させる技法もあります。しかし、いずれにせよ、やきもののベースの素地は、土色か白色の2色が基本なのです。

ところで、ここでいきなり脱線しますが、気になることが。。。白って色なのか? ということ。確かに、絵の具の白はあります。しかし、本格的に絵を描くならともかく、普通は他の色と混ぜる以外はほとんど使わないのではありませんか? 白いシャツ、白い雲…いずれも、白に色を足さないと。。。他にも、現在の印刷物において通常は白のインクは使いませんし(特色として追加する事はある)、光の三原色によると、赤・緑・青の三色を加えると白になるということで、モニターやテレビの色は成立しているのです。それに、そんな難しいことを考えなくても、“何もないキャンパス(=白)に描く”とか言うように、白はなにもないことの象徴ですよね。

ちなみに、ある白磁作家に、「あなたにとって白は色ですか?」と質問したことがあります。その答えは、「色であって色でないもの。」
・・・実は明確なお答えをいただいたわけではないのですが、後から話の内容を自分なりに解釈すると、その作家にとって白は「色」であるが、完成した作品は、持ち手や空間によって彩られる「無、あるいは起点」のような存在感であると。

しかし、ここでは「白」を陶磁器の色の一番目として紹介しましょう。なぜなら、人が「白」を美しい色として追い求め、さらには、さまざまな発色の陶磁器が生まれる一因となったのではと思うからです(学術的な話ではありませんが)。

ということで、次回から2回に分けて、代表的な白のやきものを紹介していきます。
 

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(2011年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)