陶磁器の色いろ
アースカラー編:緑(2)

update:2019/11/22

前稿に引き続き、「緑」を考えていきます。
今回は、日本の「緑」です。
 
◎日本の緑釉陶器、唐三彩
 
中国の王侯貴族の副葬品であった唐三彩は、日本にも輸出されました。そして奈良時代には日本でも緑釉陶器が焼かれるようになります。その後、日本でも奈良三彩と呼ばれるものが出土されており、なかには重要文化財に指定されているものもあるほどの名品も作られるようになりました。中国とは一味違った美しい壺です。
 
しかしながら、日本では奈良時代の緑釉や三彩は長くは作られなかったらしく、次に日本で緑釉が盛んに焼かれるようになるのは、桃山時代の美濃焼の1種である「織部焼」を待たなければなりません。
 
◎織部焼
 
織部焼とは、千利休の弟子である茶人・古田織部の好みで作られたといわれる美濃焼です。種類は多く、緑釉を全面に施釉したものもあれば、緑釉で絵付けしているもの、さらに黒織部や鳴海織部など様々。ただ、現在で織部焼といえば、緑をイメージするのが一般的でしょう。
 
現在活躍中の作家にも、織部焼や緑釉を制作する人は多く、今が日本における緑釉陶器の最盛期かもしれません。実用食器はもちろん、飾るのにふさわしい大皿や壺、さらにはオブジェまで実に多彩。たっぷりと緑釉を何度も施釉し、深みのある緑を表現した、モダンで美しい緑釉陶器がたくさんありますので、ぜひチェックしてみてください。
 
◎ヘレンドグリーン
 
最後に脱線で、西洋陶磁器で緑といえば、ということで「ヘレンド」。
ハンガリーの陶磁器ブランドであり、ハプスブルク家の庇護もあって、ヨーロッパの王侯貴族を魅了し、現在も手での絵付けを守って、世界中の憧れの的です。
 
そのヘレンドで有名なシリーズの一つであるのが「インドの華」。19世紀のパリ万国博覧会で日本ブームが巻き起こった後、柿右衛門の写しを緑で絵付けたシリーズです。
…日本の柿右衛門なのに、名前がインドであることも、日本人にとっては、納得いかない感じですが。。。東インド会社が運んだからということで、仕方がないことですね。
 
この緑で繊細に絵付けされた「インドの華」は、現在でも人気シリーズ。高級食器ですが、購入は可能です。
 
 
さて、駆け足ですが、「緑」の陶磁器をご紹介しました。
次回は最終回の「土色」です。
 

日本の陶磁―古代・中世篇 (2) 三彩・緑釉・灰釉

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(2019年初出、2023年加筆修正)