陶磁器の色いろ
青編:ベースカラー(1)

update:2019/09/20

陶磁器の「青」について書きましょう。
 
前稿の「赤」と同様、現在では科学的にさまざまな青が陶芸用に発売されていますが、ここで書くのは伝統の「青」「藍」です。
 
まずはベースカラー、つまり器全体に「青」を用いた陶磁器をあげていきましょう。
 
◎青磁・青瓷
 
陶磁器で青といえば、一番にあがるのが、この「青磁」でしょう。その歴史は古く、紀元前約1500年の古代中国の商時代(殷王朝)に原型が登場したと考えられています。日本では、縄文時代の後期ですね。
 
初期の青磁は、青くないです。なぜなら、青くなる顔料や青い釉薬が最初からあったわけではなく、土器から発展し、釉薬を掛けた陶磁器へと進化していく過程を見せてくれるやきものだからです。したがって、当初は黄土色、飴色のようなもの、やがて、深い青を出すようになってきます。
 
技術的な話は大変難しいので、極簡単に書きます。
 
青磁とは、素地の中の鉄分が還元焼成(窯中を酸素供給を減らして焼く手法)によって青みを帯びさせ、さらに上に掛けた釉薬も還元焼成によってガラス質となって、青みが帯びた層で覆われた状態のものです。
 
初期の頃は、窯が原始的であるため還元焼成があまりきちんと出来ず、酸化焼成となってしまうため、鉄分は赤味を帯びたものになります。ですから、同じ成分であっても青くない青磁になったわけです。
ちなみに、現代では、これを「米色青磁(べいしょくせいじ)」と呼んで、作品をつくる青磁作家さんがたくさんいます。また、青磁は基本的に磁器が基本ですが、初期は陶器で焼かれていたため、現代の作家さんの中には、敢えて陶土で青磁を焼き、作品に「青瓷(せいじ)」としている方もいます。
 
その釉薬も、窯が発達し、焼成技術があがるにつれて、土器の時代にはなかった、燃料の木が燃えて器に灰が降りかかり、それが溶けてガラス質のようになることに気づき、最初から水に溶かした灰を塗って焼くようになりました。それが、釉薬の始まりです。
 
そうして、釉薬が生まれ、還元焼成が発達していくにつれて、美しい青磁が生まれていったのです。もし機会があれば、中国宋代くらいの青磁の陶片を見てみると、分かりやすいと思います。青みがかった薄い磁土と、厚みがあって青みを帯びたガラス質の釉薬を見ることができます。
…さらに、一度手に取って、自然の太陽の光に当てて見てみたら、あなたも青磁の魅力にはまってしまうかもしれませんよ。
 
中国の長いやきものの歴史の中で、どんどん発展していった青磁は、各地で焼かれ、時代や窯によって、さまざまな青磁が出てきました。
日本では、恐らく龍泉窯(りゅうせんよう)の青磁がよく知られていると思いますが、実際には中国の龍泉窯と呼ばれる窯跡は、広いエリアにたくさん(500基以上)発掘されており、その中には、宮中で使われたものもあれば、民間で使われたものもあります。窯が稼働した時期も長いので、品質や意匠にも差があります。骨董として青磁を語るとき、一口に「龍泉窯」を最高級品のように言う人がいたとしたら、その人をむやみに信用しない方がいいかもしれませんね。
他にも、北宋官窯、南宋官窯、汝窯、古くは古越磁など、青磁の名窯は数多くあります。
 
朝鮮半島でも、高麗青磁が有名ですね。日本でも、その後陶工が渡ってきたことにより、青磁も焼かれるようになりますが、盛んに焼かれるようになったのは明治以降。まさに現在は、日本における青磁の最盛期と言って良いかもしれません。
 
…青磁の色の違い、古陶磁の名品や、近現代の青磁のことなど、青磁は書き出すとキリがないので、別稿にゆずることにして、今回は軽く「青磁とは」に触れる程度で終わりにします。それでも、十分に長くなりました。
 
…ということで、残りのベースカラーの青については次項に分けます。
 

青磁 (中国の陶磁)

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(2019年初出、2023年加筆修正)