陶磁器の色いろ
青編:ベースカラー(2)

update:2019/09/27

前回にひきつづき、陶磁器の「青」について。
青と言えば、青磁ですが、他にも有名なものについて、軽く列挙していきます。
 
◎青白磁
 
青白磁(せいはくじ)は、青磁との違いをよく聞かれることが多いのですが、別物です。つまり、青白磁は、「白磁の一種」で、青みを帯びた白磁だからです。白い磁器に無色の釉薬を掛け、還元焼成で焼いた白磁のうち、釉薬に青みが帯びたものを青白磁と呼びます。特に、素地に模様などを彫り込んだ場合、その溝に釉薬が厚くたまり、青くなったりした作例が多いです(現代の作家さんは、つるりとしたボディに釉薬のたまりを作って青白磁をつくる作例もたくさんありますが)。
 
白磁というのは、素地を精製する技術を上げてゆき、鉄分などをのぞくことで、焼成して黒っぽくなったり、青みが帯びたりしないようにして、「雪のような」白を目指したやきものです。したがって、その歴史は青磁よりかなり後になります。
 
◎瑠璃釉
 
青磁や青白磁とは異なる登場の仕方をしたのが、「瑠璃釉」によって、深い青地のやきものです。
この青は、コバルト顔料(酸化コバルト)を入れた釉薬で出したもの。こう書くと近現代のものと勘違いされるかもしれませんが、瑠璃釉に用いられたコバルト顔料は、中国の元や明の時代には、交易によってイスラム圏産のものが入って来ており、中国産のコバルト系顔料である呉須の青とは、異なる発色をしています。
…コバルト顔料の青については、次項の染付の話で、書きます。
 
瑠璃釉に白い紋様を浮き出した作例は、元や明時代にさかんに作られ、日本でも江戸時代の伊万里で作られています。
 
◎セーヴルとリモージュのブルー
 
深い瑠璃色の釉薬といえば、西洋陶磁器が好きな方なら、明の磁器より先に思い浮かべるものがあるかもしれません。
一つは、フランスセーヴルのクラウデッドブルー。深い濃紺の地に金彩が施された美しい器です。セーヴルの青には、他にも“王者の青”ファットブルーと呼ばれる高貴な濃紺、さらに水色が美しいアガサブルーなど、さまざまな青がセーヴルにはあります。セーブルでは、酸化コバルトと長石釉の調合によって、さまざまな青を作り出してきた歴史がありますが、その詳細は公開されておらず、わかりません。
 
また、フランスのリモージュにも、コバルトブルーの釉薬に、繊細な金彩を施したシリーズが古くから作られています。セーブルは、かつては王室のため、現在も国立として生産数が管理されている幻のやきものですが、リモージュは現在まで数多くの窯が存在し、お土産としても買える食器です(高級品ですが)。
 
◎ウェッジウッドのジャスパー
 
イギリスが誇る名窯であるウェッジウッドといえば、青字に白のレリーフが印象的なジャスパーでしょう。磁器ではなく、ストーンウェア(炻器)であり、磁器のような透光性はなく、白地もあれば有色のものもあり、石のように硬い、焼き締めた陶器です。
 
ジャスパーは、白の素地にさまざまな金属顔料を混ぜることで、多彩なカラーバリエーションを出していますが、中でも代表的なのがブルー。
日本でもよく知られている、水色に近いペールブルーが代表的ですが、他にも濃いロイヤルブルーなどもあります。
 
さて、今回はベース、器本体に青を使った陶磁器を紹介しました。
次回は器に描く青をご紹介する予定です。
 

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(2019年初出、2023年加筆修正)