日本六古窯と私的六好窯
その6「壺屋」

update:2018/05/23

私的六好窯の第6回、最終回は壺屋焼。主要地は、沖縄県那覇市壺屋・中頭郡読谷村です。

最後は沖縄です。これまでの5カ所とも、日本六古窯ともガラっとイメージが異なる場所ですね。なぜなら、沖縄のやきもの(やちむん)は琉球王朝時代に独自の風土と共に発展してきたモノだから。文化的に考えると、日本六古窯に代表される、本土のやきものとは一線を画しています。

壺屋焼のはじまりは、琉球王朝が産業振興政策として、天和2年(1682年)に各地の窯を統合し、現在の那覇市壺屋地区に集めたこと。荒焼(あらやち;釉薬をもちいない焼締陶)・上焼(じょうやき;文様を施し、釉薬を掛けた陶器)がありますが、現在の壺屋焼といえば、沖縄独特の魚などの文様を施した上焼が一般的なイメージです。

ちなみに、この窯が統合する前、各島々の風土に合わせ、さまざまなやきものがあったことも、調べていくと歴史・民俗学的にも含めて、実に興味深いのですが、それは専門的になりすぎ(筆者もたいして詳しくないので)、興味のある方は、ぜひ調べてみてください。

さて、話を戻して、明治に入ります。
琉球王朝がなくなると、壺屋焼も冬の時代になりますが、「民芸陶器」の人間国宝・濱田庄司が度々訪れ、再興がはじまります。「琉球陶器」の人間国宝となった金城次郎(1912-2004)や、新垣栄三郎などの名工が登場し、一気に全国区となりました。

現在の壺屋焼は、那覇市内の壺屋地区の「壺屋やちむん通り」と、前述の金城次郎が移転して作った読谷村の「やちむんの里」がメインです。

まずは壺屋やちむん通りから散策しましょう。

観光地で有名な国際通りから入って少し歩くと、静かな石畳の町並みに出ます。壺屋焼博物館を目指して行きましょう。この博物館で歴史を学んだあと、ぶらぶら通りを歩くと、現在壺屋で唯一残っている琉球王朝時代の薪窯(登窯;のぼりがま)・南窯(ふぇーぬかま;沖縄県文化財指定)があります。横がカフェになっていますので、景色を眺めながらお茶をするのもOK。

ここで一息入れたら、あとは素敵な壺屋焼を求めて、さらに奥へ。ゆっくり散策しても、1時間もあれば歩けます。ただし、沖縄の人柄に触れてしまい、店内などで話し込んでしまうと、数時間必要かもしれません(運が良ければ、濱田庄司の話などが聞けるかもしれませんよ)。

さて、もう一つの「やちむんの里」は、那覇からですと、車で小一時間。移動手段が少ないので、ちょっと贅沢ですが、タクシーの貸し切りも一つの手段としてオススメです。事前に交渉して金額を決めておけば、他の観光地に比べて比較的タクシー代が安いので、楽しいドライバーを見つけたら、直接交渉してみましょう。

やちむんの里は、ぐるりと歩いても、30分と必要はありません。しかし、中央には現在使用されている大きな登窯があり、工房の作業の様子がのぞけたり、販売店がたくさんあったりと、好きな人なら、半日ぐらいは飽きません。亡き金城次郎の後継者たちもこの地に窯を構えており、東京では見つからないような作品を思いがけない値段で買えるかもしれません(ただし、カード不可のところもあるので、要注意・・・実体験です)。

さぁ、現在ただ今の筆者が考える私的六好窯は以上です。しつこいようですが、個人的に旅して楽しいところという観点からの選別ですから、皆さんもそれぞれ全国を回って、ご自身の私的六好窯を選んでみてください。
 

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(2011年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)