日本六古窯と私的六好窯
その1「備前」

update:2018/03/07

今回から全6回、筆者が個人的に旅に行くなら楽しい窯業地6箇所を順次ご紹介していきます。

第1回は備前焼。主要地は、岡山県備前市伊部です。

備前焼は、六古窯の一つで、古くは「備前の徳利、唐津のぐい呑」と言われたように、愛好家の多いやきもの。釉薬(うわぐすり)を掛けず、良質な備前の土味を生かした焼締陶です。彩色も絵付けもないにもかかわらず、胡麻を振り掛けたような模様がついている「胡麻」や、器を重ねて窯詰めしたことで焼けが抜けたような模様を出ている「牡丹餅」、窯詰めの時に入れられた藁があたった部分が赤く模様のように浮かんだ「緋襷」、などなど、土と炎が作り出す、さまざまな「景色」があり、備前焼は実に多種多様な焼締となっています。

はじまりは定かではありませんが、平安時代から鎌倉に掛けて、初期の備前焼が形成され、室町時代には全長50メートルを超える大窯が作られています。その大窯は共同窯であり、備前六姓と呼ばれる6つの陶家によって運営されていました。
実は、その6家の一つが、昭和に最初に備前焼の人間国宝となった金重陶陽の排出した「金重家」です。陶陽は本家ではありませんでしたが、現在も本家の代々当主は金重利右衛門を襲名しており、現在は77代目です。

では、伊部の街を歩いてみましょう。

岡山市内から車で小一時間で、備前焼の中心地・伊部に着きます。
赤穂線で伊部駅を降りれば、そこから徒歩での散策もいいですね。30分圏内で、主要な名所が集まっています。

まず、駅舎が入っている建物内には「備前焼産業会館」。備前焼の作家や窯元の器がズラリと並んで買い物ができます。ここでチェックしてから、各窯元散策へ。

次に、駅を出るとすぐに目に飛び込んでくる「備前市立備前焼ミュージアム(※註)」。古備前から、近現代の作家ものまで、備前焼の名品が集まり、備前焼の全てが展示されているところです。必ず1度は足を運びたいところですね。

そこを出たら、赤穂線に沿って走る国道2号線を渡って北側に入り、国道に沿うようにある細い路地が旧山陽道であり、備前焼の中心地である伊部の集落です。
この通りは、さくさく歩けば30分程度ですが、多くの窯元や販売店、備前焼の伝統的な陶家などが連なっており、ゆっくりじっくり歩いて欲しい。前述の金重家の「金重利陶苑」もありますよ。

また、お店めぐりもいいですが、特にオススメしたいのが「天津神社」。陶祖を祀ったこの神社は、窯元や有名な陶家の窯印が入った備前焼の陶板や備前焼の狛犬など見所満載。さらに神社を奥に進むと、「伊部北大窯跡」もあります。

伊部の大窯跡は、この北の他に西と南がありますが、前述の北とは反対側、伊部駅の南側にある「伊部南大窯跡」。こちらは国の史跡に指定されており、大きな丘のような窯跡に圧倒されます。

ちなみに、毎年10月には備前焼まつりが開催されます。また、今回は伊部のみに限定しましたが、国道2号線をさらに東西に進めば、他にもまだまだ見所があります。
 

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(2010年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)
 
※註:2023年5月より建て替え準備のため休館。2025年に新しく開館する予定です。(2023年7月加筆)