日本六古窯と私的六好窯
その3「京」

update:2018/04/04

私的六好窯の第3回は京焼・清水焼。主要地は、歴史的には京都市東山区五条坂。ここは街中にあり、散策にぴったりのエリアですが、現在はここからエリアがさらに広がっていて、窯業地としては京都内に点在しています。

京焼・清水焼の歴史は江戸時代です。野々村仁清のモダンにも見える意匠の色絵や尾形乾山に代表される銹絵(鉄絵、水墨画のような絵付け)、青1色で描く染付(そめつけ)など、技法的にも多彩。多くの名工が生まれ、近代以降は人間国宝などの名高い陶芸家も数多く存在します。そのため、六古窯には入りませんが、見所の多く、伝統から造形まで多彩な陶芸家、窯元が集まる人気の窯業地です。

しかし前述の通り、現在の京都のやきものエリアはあちこちに存在します。各エリアはそれぞれ歩ける範囲内のこぢんまりとした集落ですが、各エリア間は車を使っても1日に回りきるのは難しいですね。

ざっくり名をあげると、京都のやきもの発祥の地・五条坂エリア(東山区:五条大橋から清水寺に向かうエリア)、明治期に五条坂から一部陶工が移動してできた泉涌寺エリア(東山区:泉涌寺や東福寺のそば)、大正期にやはり五条坂から移動した日吉エリア(通称蛇ヶ谷、東山区:三十三間の近く)、昭和に入って、新天地への開拓精神でうまれた、山の中の静かな炭山エリア(宇治市)、そして、同じく昭和期に陶磁器産業および作家活動の発展と近代化を謳った清水焼団地エリア(山科区)が有名です。

なぜこんなにも分散しているのかと言えば、一つには京都の土地事情があるのでしょう。行ったことのある方ならおわかりだと思いますが、発祥の地・五条坂は京都市内でも観光の中心地で、さらに住宅も多く、駐車場を探すのも大変なくらいの密集地です。ここで新しい人が窯を開こうとしても、単純に場所がない。まして、窯焚きという作業は、例えガス窯だとしても、新参者が狭いところで窯を焚こうとしたら、周囲の理解を得にくいことでしょう。さらに薪窯などは、京都市内は条例で禁止されています。五条坂エリアに残る古い登窯(のぼりがま:薪窯の一種)にもう火が入ることはないでのです。

さて、ここでは観光ポイントとして、まずはここから、ということで五条坂を歩きましょう。

ここに行くのは電車か市バスがオススメです。車は止めるところがほとんどありませんし、びっくりするほど料金も高いです。緩い上り坂が続くので、少々きついですが、店々をのぞきながらゆっくり歩きましょう。

鴨川を渡る五条大橋(牛若丸と弁慶の逸話で有名)を超え、五条通へ。目線を下にして通りの左手を歩くと、「ここより五条坂」という小さな石碑を見つけられるでしょう。そこから、陶磁器の店が連なります。陶器神社の「若宮八幡宮」などもあり、店の中には有名作家の名前を見つけることも。
通りから脇にはいれば、「河井寛次郎記念館」もあり、近現代の陶芸ファンは必見です。

さて、歩くとすぐに大きな通り、東大路通にたどりつきます。それを渡って二股を左の急な坂を進むと、それが清水寺の参道「茶わん坂」。そのまま清水寺へ向かうと、坂の終点近くには「近藤悠三記念館」もあり、こちらも染付(そめつけ:青で絵付けした陶磁器)の亡き人間国宝の作品を見ることができます。

また、陶器まつりも盛大です。毎年五条坂では8月に開催されますので、一度はぜひ。
 

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(2010年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)