国宝のやきもの
野々村仁清

update:2018/06/27

日本で国宝・重要文化財に指定されている文物は、ほとんどが近世以前のもの。
しかも、書画なら作家名が残っていますけど、陶磁器などの工芸品は基本的に無名。陶芸家という概念もないし、陶工には個人で名を残して作る「作品」はないからです。

もちろん、例外があります。
その一人が野々村仁清(ののむらにんせい)。京焼の名工で、自分の名前を刻むことで、「商品」のブランド価値を高めました・・・。当時としては、高いプロデュース能力だったのかな、と想像します。

野々村仁清については、生没年不詳で、謎の多い人物です。
江戸時代初期に、京都で活躍した陶工ですが、実に独創的な意匠の色絵を次々と生み出した「天才」的な人物なのです(もしくは、指導したという茶人・金森宗和がすごいのか?)。

仁清のことは、ぜひこの本をお薦めして、ここでは割愛します。。。諸説いろいろですから。

岡佳子 『国宝 仁清の謎』 角川叢書

さて、この野々村仁清の色絵陶器は名品として、国宝や重要文化財の数々指定されています。
中でも、国宝は二点。
他に名を残した作品で、国宝に指定されているのは本阿弥光悦の「不二山」という茶碗のみですから、二点も指定されている仁清のすごさがお分かりいただけるのではないでしょうか。

『色絵雉香炉』 野々村仁清
 日本 江戸時代 京都
 石川県立美術館
※同じモチーフの重文『色絵雉香炉』も同館にあります。

『色絵藤花文茶壺』 野々村仁清
 日本 江戸時代 京都
 MOA美術館

ただし、仁清は本当に多くの名品が残されています。ですから、この国宝2点より、重文のこちらのほうが好きだということもあるでしょう。
国宝は日本を代表する名品ですが、それにこだわらず、いろいろ見ていただければと思います。例えば、「色絵雉香炉」はもう一つあって、そちらは重要文化財。同じく石川県立美術館にありますから、見比べてみるとおもしろいですね。
 
(2023年加筆修正)
 
追記。。。
やきものの名品リストはこちらでまとめています。ぜひ参考に。
 
 

国宝 仁清の謎 (角川叢書)