銘つれづれ
はじめに

update:2019/07/30

最初に言い訳をしておきますが、本稿では無責任且つ個人的に主観を書こうと思っています。ただし、執筆時点において、歴史的、研究者的に主流と考えられている“事項”に関しては、参考文献や研究者からの伝聞を元に、記載しています。

さて。。。

歴史的な名碗には「銘」がついていますね。和歌や漢詩からとられたり、由来から付けられたり、いろいろなのですが、いずれにしても、数百年と大事に愛好されてきた茶道具の銘はなんとも趣深いもの。茶会では、亭主と正客(茶席の上座についた客)とが、使われた道具などについてのやりとりもあるのですが(…最近では形骸化していますけどね)、その際に茶碗や茶入、茶杓などの銘も話題に上ったりします。

まあ、それで、最近(というか、筆者の数年の茶道経験では)、茶会を開くために、自分達の”なんてことのない”道具にもむりやり銘などを付けたりして、ちゃんちゃらおかしかったりするわけですが。。。和歌とかに造詣もないから、歳時記とかから季語を引っ張ってきたりして、無理やりね。。。

でも、茶の湯の世界で、銘は尊称のようなもの。名器であって、愛されたきたものである証のようなものです。
例えば、千利休が切腹をする前に、自ら削って古田織部に与えたという茶杓の銘は「泪」。
なんとも泣ける話ですね。
ちなみにですが、現在は名古屋の徳川美術館が所蔵していますが、常設ではありませんので、特別公開のタイミングを待たなければなりません。茶道界の至宝の一つですから。。。

ちなみに銘は、茶器をしまう箱に書いてあるのが通例。持主、例えば利休などの茶人が茶器に銘をつけ、箱に書いたりしていました。しかし、作者本人が作品の箱書きをするようにもなります。それを現在では「共箱」と呼びます。一方で、鑑定人が書く「識箱」、作者の後継者や子孫が見極めて書いたものは「極箱」、茶道の家元などが書いたものは「書付箱」。なかなか複雑ですね。

さてさて、本稿は、やきものが主題ですから、茶碗の銘について、つれづれ書いていこうと思っています。
最初に書かせてもらったように、感想にちょっとだけ豆知識を加える程度の軽い読みものにする予定です。

ということで、今回は序文だけで長くなってしまったので、次回から。
《不二山》から始める予定です。なぜって、この茶碗が最初の「共箱」をつけたと言われているからです。
 
(2023年加筆修正)
 
追記。。。「陶磁器名品」リストはこちらに掲載しています。