銘つれづれ
茶碗《不二山》

update:2019/08/06

はじめに、くどいようですが、本稿では無責任且つ個人的に主観を書いています。ただし、執筆時点において、歴史的、研究者的に主流と考えられている“事項”に関しては、参考文献や研究者からの伝聞を元に、記載しています。

さて。。。

初回は《不二山》を取り上げたいと思います。
なぜなら、日本では2碗しかない、国焼の国宝茶碗の一つだから。それに、初めて「共箱」が作られた例とされているから。

まずは《不二山(ふじさん)》について。
江戸時代初期の芸術家・本阿弥光悦の作の「白楽茶碗」。
芸術家というのは西洋的な概念の言葉なので、光悦の肩書きとして使うのはふさわしいかどうか疑問の余地はあると思いますが、現代的にいえば、まさにそんな人だと思います。
一応、当時の言葉を使えば「文人」。書画に優れ、茶の湯の造詣が深く、樂家の指導を得て楽茶碗を焼いたと言われています。

この不二山という銘は、光悦自身が考え、共箱に書いたと伝えられています。実際、光悦本人の墨書による共箱が残っているのです。

不二山という茶碗は、いわゆる楽茶碗の「赤」や「黒」とは様子が違い、上半分が白、下が黒という片身変茶碗。白い部分が白釉で、下は釉薬が飛んで炭化したと考えられます。

この、一碗のなかに見せる黒白を、不二山(富士山)に見立てているのです。
しかも、おそらく日本人の誰もが納得してしまう。「ああ。富士山」と。
偶然の産物なのか、作為の結果なのか、悩ましいところですが、陶芸は「炎」が生み出す芸術。いずれにしても、日本人が愛する富士山の名にふさわしい「超絶」名品と言わざるを得ないですね。だって、優美でいて、絶対的な存在感を、この一碗から感じさせてしまうのですから。
…それにしても、光悦自身もよほど自信があったんでしょうねぇ。自分の茶碗に「不二山」とはね。。。

常設ではありませんが、企画展などで比較的公開されることも多いですから、チェックの上、ぜひ、実物の凄さを確認しに行ってください。

サンリツ服部美術館
長野県諏訪市湖岸通り2-1-1
http://www.sunritz-hattori-museum.or.jp/
 

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(2023年加筆修正)
 
追記。。。「陶磁器名品」リストはこちらに掲載しています。